・数字に込められている意味
タロットの大アルカナは合計して22枚である。しかしカードに記された数値を見てみると、21が最後の数値であり、丁寧に0番も存在していない。これはローマ数字に0が無かったからであるが、それは単に「なかったから」と言う話で済ませて良いものではない。そもそも、古代において0という数の概念は存在していなかった。母権的な社会においては何者であれ輪廻転生をすると考えられていたからであろう。ではなぜ、愚者は1番ではないのだろう。世界を22番にしなかったのだろう。わざわざ21と言う数字に拘ったということは、マルセイユ版を作るにあたって21が重要な意味を持っていたということになる。少なくともジャン・ノブレやその師匠はそう考えていた(あるいは知った)はずだ。
ここで一旦、小アルカナの話をしよう。小アルカナは全部で56枚あり、マルセイユ版やヴィスコンティ版では複雑な図像は描かれていない。このことから小アルカナと大アルカナは本来別々の物だったと考えられ、トランプとほぼ同一のものであるという考えは前に説明した。ここで問題なのは小アルカナの総枚数56である。これはサイコロ3つ、重複なしの場合の組み合わせの総数である。対して大アルカナ22枚はサイコロ2つの重複なしの組み合わせの数21よりも1多い。22と56を足した78という数字は、数秘術的な意味があるのだろう(一例として、大22小56を併せた枚数である78は、黄道十二宮を全て足した数と等しい)が、タロットには全体枚数78と、愚者を抜いた21+56=77の考えが混在していると言える。つまるところ、マルセイユ版において愚者に数がないのは、タロットの総枚数を、「数秘術的に意味のある78枚」か、「サイコロ占い的に意味のある77枚」のどちらにするかで悩んだ末の苦肉の策だったのかもしれない。なお、魔術師のテーブルに置かれているサイコロは3個である。そのため、彼は小アルカナ(四つのスートとダイス三つ)を持っていると考えられる。
しかし、この問題は小アルカナと大アルカナを組み合わせた場合の話である。大アルカナだけで見るならば、それ単体で輪廻転生の物語を意味しているし、総枚数を愚者と21世界を一枚のカードに纏めて、21枚にすれば、大アルカナだけで二つのサイコロの組み合わせを表し、キリが良くなる。
こんなにも21が重要な数であるというのは、何もサイコロ2つの組み合わせ総数が21だからという理由だけではない。そもそも21という数字は7が3つ組み合わさった数値である。7と3は女神の数値であると考えられていた。7は大熊座、プレアデス星団と関係しており、3は三相一体(乙女、母、老婆)の数である。これらは変化を意味する数字であり、季節の廻り、すなわち時を進めていくという要素を持つ。さらには輪廻転生を意味する。21は『2』と『1』で出来ており、偶数と奇数(陰と陽)が組み合わさった数字とみることも出来る。このことから「大アルカナは本来21枚になるように作られている」と考えた方が辻褄があう。
・本来の組み合わせ
以上の事を総合すると、マルセイユ版のように対となるカードを足して20になるように設計するのは些か間違いに思えてくる。10、20、21は仲間外れになってしまうし、全体の枚数が21であるか22であるかのどちらにせよ、20は関係のない数字に見える。
しかし、ここで一旦20という数字を肯定してみよう。21世界(女神)が「全て」を意味し、愚者(男)とセットであったと考えるのならば、愚者と21世界は全体から避けて考えても良いのではないだろうか。そうなると1魔術師~20審判のカードが残る。これらは前半と後半で分けることが出来るのだが、足して20の組み合わせを作ろうとすると、10、20が仲間外れになってしまうことには変わりがない。此処で足して20ではなく『21』となる組み合わせを作ってみよう。すると問題は解消される。1と20、2と19……10と11。
つまり、20も、21も重要な数であるというマルセイユ版の考えは間違っているわけではない。ただ、愚者の存在と、足して20になる数値を図像に採用したことが問題だったのだ。つまり、本来、愚者と世界は一つの『21世界』であり、残った20のカードは足して『21』になるよう組になっていなければならない。
よって、原タロットがカードであれ、口頭伝承であれ、本来の組み合わせとは以下の通りなのではないか。
『21世界(愚者)』
『1魔術師』『20審判』
『2女教皇』『19太陽』
『3女帝』『18月』
『4皇帝』『17星』
『5法皇』『16神の家』
『6恋人』『15悪魔』
『7戦車』『14節制』
『8正義』『13死』
『9吊るされた男』『12隠者』
『10運命の輪』『11力』
この並びはウェイト版が11力と8正義を入れ替えた理由を説明できるかもしれない。また、6恋人と15悪魔がなぜ似ているのかの答えでもあるかもしれない。だが、ウェイト版には詳しくないので、沈黙。
ところで21=7×3と説明したのだが、21世界を除いた20のカードを7、3で割ってみよう。当然割り切れないのだが、ひとまず以下の表を見て欲しい。
| 1魔術師 | 2女教皇 | 3女帝 | 4皇帝 | 5法皇 | 6恋人 | 7戦車 |
| 8正義 | 9隠者 | 10運命の輪 | 11力 | 12吊るされた男 | 13死 | 14節制 |
| 15悪魔 | 16神の家 | 17星 | 18月 | 19太陽 | 20審判 | ? |
カードの解説の時に少し触れたが、最後の?に入るカードとは何であろうか。ここに入るカードは21世界や愚者ではない。此処でタロットの原型とは、超古代信仰、あるいは古代宗教的世界観であると仮定してみよう。つまり、古代における輪廻転生の考えがタロットに含まれるのだとしたら、『?』に入るものは当然、最初の数字である1魔術師である。タロットが直線的な物語なのだとしたら、何故1番の魔術師が4元素を既に持っているのだろうか。それはつまり、タロットが輪廻円環の物語であり、1番の魔術師とは、死して女神と結婚した英雄が、現世へと復活したことを意味するからである。則ち、20枚のカードは最初と最後を1番の魔術師が担っているため、7×3=21のカード群であると言え、やはり『世界と愚者』は全体の枚数には含めないと考えた方が自然である。
マルセイユ版は大アルカナにおける『20』と『21』が重要な数字であるということは知っていたが、愚者と世界を分けて考えていたため、それらの数字がどのように配置されているのかを間違えてしまったのだろう。同時にそのことは、ジャン・ノブレやその師匠が、伝統の継承ではなく、真実の探求をしていたことの証拠でもある。
・タロットに対応する五元素
タロットに対応する元素には様々な説がある。しかし、多くの者が第五元素たるアイテール(エーテル)を度外視している。ここで、一旦、マルセイユ版タロットにおける色について考えてみよう。数えると8色である。そのうち6色については、古くからの詩によって意味が判明している。以下に記す。
・白はジャック親方の涙
・黒は彼を産んだ大地
・赤は彼が流した血
・青は彼が受けた打撃
・黄色は忍耐
・緑は希望
残る2色は、ライトブルーと薄橙色だが、詩には6色しか語られないので、ライトブルーと薄橙色は度外視して、対応させた表は以下の通り。紫があるが、詳しい解説は後に記す。

・アイテールとは何なのか?
アイテールとは第五の元素の事である。そもアイテールと言う言葉は、古代ギリシアにおける「天の上層」、「常に輝き続ける物」を意味する言葉で、死すべき者の地上に対する神の領域「天界」を意味する。そこから第五の元素と言う概念は派生した。
天界とは言っても、タロットにおける天界のカード群(11~20)と、第五元素アイテールでは意味が違う。タロットにおいて、天界のカード群の終わりには現実のカード群の始まりが待っている。すなわち、11から20は永遠の幸福を意味する物ではない。対してアイテールは永遠を意味している。そこでアイテールとは天ではなく「楽園」であると考えてみよう。
楽園とは自身と対になる者を愛した時に顕れる幸福である。21世界と愚者は、1~20のどの段階においても常に傍らに存在しているが、自身と対になる存在を愛せない者には、幾ら輪廻が廻ろうと辿り着けない場所なのである。人は古来、アイテールを愛と呼んでいた。そして、愛がどこか遠く、天の高さにあるなどとは思っていなかった。しかし、いつからか人は愛を手の届かない場所にある物と考え、終いにはその存在を無視した。ときたま傍らに立つ愛の存在に気づく時があっても、それは幻想であるとか、酷い時には汚らわしい欲であると考えた。この世にあるのなら、それはアイテールではないと考えた。こうして人は幸福の隣で不幸となった。
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